薬局と患者さまの期待のズレを減らしたい。
一歩踏み込む勇気をkakariとともに。

有限会社エム・アンド・エイチ わかば調剤薬局

高橋 泰樹 先生

約30年前より、東京都西東京市に根差してきたわかば調剤薬局さま。住宅街に立地し、近隣に小児科内科、整形外科があることから、乳児から100歳近くのご高齢の方まで、全世代の地域の患者さまが集まります。わかば調剤薬局では2019年7月にkakariを導入し、2022年6月現在約850名のかかりつけ登録を頂いています。今回は導入を推進してくださった高橋先生へ、kakariを導入された際の流れや効果、わかば調剤薬局としての想いをお伺いしました。

TOPICS 01薬物療法と健康サポート。ともに頼れる「薬と健康のパートナー」に

わかば調剤薬局が目指すのは、「薬と健康のパートナー」です。日頃から薬局スタッフとは、地域の方々の薬と健康のパートナーになりましょうと話しています。薬物療法と、健康サポート、この2つの柱を大事にしたいと考えています。

薬物療法の理想として、「こういう薬がほしいんです」と患者さまが仰った際、その人にその薬が適してない、他の薬のほうが適している、というときは、「こういう理由であなたはこちらの薬の方が良いのでいかがですか。」と、しっかり指導できて、それを受け入れてもらえる関係性を構築しておきたい。
患者さまから求められるまま、コンビニのように「これください」「はいどうぞ」で渡すのではなく、そこに薬剤師という専門家、職人としての介入をする。どれだけ価値を出せるかというところが大事だと考えています。

もちろん経営とのバランスがあって非常に難しいことですが、理想的には患者さまが望む薬物療法をそのまま提供するのではなく、薬剤師の専門性を高めることで、その患者さまに最適な薬物療法をしっかりこちら側で考えて提供し、それによって患者さまの満足度も高まる。そのような関係性を目指しています。

健康サポートとして最近まで行っていた取り組みとしては、毎月の健康情報の発信が挙げられます。雑誌やネット、テレビのニュースなどで取り上げられている内容と近いですが、夏場になってきたら「脱水に注意しましょう」と注意点の発信とともに「経口補水液ありますよ」と案内したり、感染症が流行ったら、夏の三大感染症はこれですよと注意喚起したり。

今掲示しているのは嚥下機能のお話です。ご年配の方向けに、嚥下能が衰えない様なお顔の体操の案内を待合室でスライド放映したり、ホワイトボードに掲示しています。
折角作ったものなので、咀嚼の話は「高齢者の人に必ず1回はアプローチしましょう」、という取り決めにして、年配の方みなさんにアプローチすることにしました。アプローチしたら薬歴にその旨を記載し、漏れがないようにしました。「最近飲み込む力とかどうですかね」とか、投薬時に聞いて患者さまともやり取りしています。kakariの嚥下機能アンケートも使っていたかもしれませんね。

薬物療法と健康サポート。ともに頼れる「薬と健康のパートナー」に

TOPICS 02修行先の薬局でkakariに出会った。メリットしか感じられなかった

私は薬学部卒業後、最初から薬局薬剤師として勤めていたわけではないんです。薬学部卒業後は製薬会社での営業や海外に住んでいた時期も経て、その後薬局薬剤師になりました。
薬剤師になる前の生活の中で、薬局を経営する両親を見ていて「薬剤師は医療・社会に貢献する良い仕事だな」と感じたんです。そんなとき、父からわかば調剤薬局を継ぐ話をいただいて、社会に役に立てて家族の力にもなる仕事に魅力を感じ、薬剤師になりました。

とはいえ、いきなり実家には入る訳にはいきません。なので修行で2年ほど知り合いの薬局に入らせていただいていたのですが、その薬局がkakariを導入していたんです。当時から、kakariは薬剤師としても患者さまからの反応もとても良かった感触があったので、わかば調剤薬局でも導入しよう、と思っていました。

そんな経緯で導入したので、具体的に「kakariで解決したいわかば調剤薬局の課題」というものは思いつかないです。むしろ、kakariを導入すると「こんなメリットがある」という感覚でした。

あくまで経営者目線ですが、kakariは費用対効果が分かりやすいですよね。
色々な薬局で薬を受け取っている患者さまって一定数いるので、そういう患者さまが1枚でも今まで持ってきていなかった処方せんを送ってくれたら技術料が取れるので、何名の患者さまで利益が出るのか、すぐ分かります。
それも、非常に少ない人数で元が取れてしまうんですよね。患者さまのメリットも勿論沢山ありますし、導入しない理由がむしろ無かったです。

実際導入したら、今まで持ってきていなかった処方せんを送ってくれる人が沢山いました。

TOPICS 03患者さま目線でkakariを案内。スタッフ全員が協力する

スタッフへkakariの説明をする際は「経営的な費用対効果」ではなく、「kakari」という名前の通り、「かかりつけの概念とマッチすること」を伝えました。
勿論最終的な経営メリットも共有していますが、まずは「色々な薬局でもらっている薬を、うちの薬局でもらえるように。」「混み合っているときの待ち時間を減らせるし、不足薬があった際の二度手間も減らせるし、チャットで質問も気軽に出来る」と、患者さま目線でのメリットをスタッフに説明しました。実際患者さまへも同じように説明していますね。

kakariは患者さまを受け付ける間口を広げるツールのため、導入するとどうしても忙しくはなりますよね。薬局にいらした方・電話をかけてきた方・FAXで送ってきた方、に加えて「kakariが届きました」が増えるので。
サービス特性上、「ちゃんとしなきゃ」という意識を持つことが大事なので、kakariが届いたら敏感に反応してください、とお願いしていました。そのため最初の頃は少しナーバスな部分もありました。特に受付の方はアンテナをもう一つ張らなければならないということで大変そうではありましたね。

導入したときは、スタッフ全員で患者さまにkakariを紹介していきました。
案内する際は「kakari導入日より後に来局したことが無い方」へ、必ずkakariを紹介してもらいました。他にも店内にkakariのチラシの掲示や設置をしたり、案内スライドも流して案内が漏れない様にしています。

それでも、少し珍しい薬が処方されたり、調剤に時間がかかるような薬があった際、患者さまに「kakariご案内させていただいてましたか。」と聞くと、「いや聞いてないです。」という患者さまは、まだたまにいるので、気が付いたら積極的にkakariを案内していますね。

アプリダウンロードは、待ち時間の間に私たちスタッフがやってあげるのが一番スムーズですね。待ち時間中って暇なのでやってくれやすいんです。
なので処方せんを受け付けた際に新患さんと分かって、業務に余裕があれば、スタッフから患者さまに「kakariというのがあるのですが、待ち時間の間にどうですか」とアプローチをよくしていますね。
特にスマホの操作に慣れていない年代の方に、「もし良かったらこちらでやりましょうか?」と声をかけると、「じゃあよろしく」と任せてくださる患者さまも結構いらっしゃいます。

最近ですと、コロナ疑いの患者さまが増えた時期にkakariのご案内を積極的にしていました。この間2か月で130名ほど登録患者さまが増えています。
発熱患者さまにドクターが電話診察して、うちに処方せんを送ってくださるのですが、保険証の確認や連絡が出来ないので、電話指導時に「保険証の確認はスマホアプリでお願いしています。登録お願いできますか?」と言って登録していただいていました。

これをきっかけにkakariを継続して使っている方もいらっしゃいます。
もちろん、 病状を聞いて投薬して、kakariを説明して更にそこから保険証を送ってくださいってやり取りすると、kakariがどういうものか忘れられてしまうこともあります。そういう方へは、後日「kakariでこんなことができますよ」と説明することもありますね。

患者さま目線でkakariを案内。スタッフ全員が協力する

TOPICS 04「待ち時間」は薬局の永遠の課題。患者さまの立場は違えどkakariは欠かせない

薬局を利用される患者さまが一番求めている課題は、「待ち時間」ですよね。わかば調剤薬局でも、患者さまに取ったアンケートで「待ち時間」がもう常に1番に上がってくるんです。薬局として、待ち時間を減らすための努力は必要、そのやり方の1つがkakariだと思います。

わかば調剤薬局は、小児科が近いので小児の患者さまが沢山いらっしゃいます。小児科も混むことがすごく多く、そうすると薬局も混みますよね。お母さま方が、受診したらkakariで処方せんを送って買い物を済ませて、通知が来たら取りに来る、といった効率的な使い方をされていて、重宝しています。

また、「お薬手帳を作ったことがない」0歳1か月の赤ちゃんも、乳児検診や予防接種をきっかけでいらっしゃいます。そういったお母さま方に「今はもう電子お薬手帳ですよ」と伝え、kakariの説明をすると、「あ、そんなのあるんですね。」と、その後わかば調剤薬局にしか来ない、という方もいらっしゃいます。

あと、医療的ケア児の患者さま。医療的ケア児の場合、大病院や大きな小児科の病院などに2ヶ月に1回くらい通っているのですが、そういう病院って大体ご自宅から離れているんですよね。処方せん枚数が5枚になってしまったり、調剤に1時間以上かかることもあって、患者さまとしても、薬局としてもkakariは欠かせません。

服薬が大変という意味では、パーキンソンの患者さまもkakariを喜んでいただけるのでは、と思います。老老介護など、スマホ自体を利用できない方へはkakariは案内できていないのですが、1日7~8回くらいに分けて服薬が必要な患者さまの場合、薬局に処方せんを持ってきたら、一度帰宅して服薬して、再度薬局に取りに来る、というのを毎回やって頂いているので、kakariって有用なのでは、と思います。

費用対効果の面でも、元々の期待は裏切られていません。働き盛りでお忙しい30代~50代くらいの方が、色々な薬局で薬を受け取るのは大変なので、kakariで処方せんを送るだけしておいて、毎回土曜日にまとめて受け取りに来るというサラリーマンの方もいらっしゃいます。

「待ち時間」は薬局の永遠の課題。患者さまの立場は違えどkakariは欠かせない

TOPICS 05薬局と患者さまの溝を埋める。kakariは一歩踏み出すことを助けるツール

わかば調剤薬局は「薬と健康のパートナー」として、何か迷ったらいつでも相談できる薬局、という立ち位置となることを目指しています。
場所が良いから様々な人が来るというより、地域の方にしっかり選んでもらえること、地域に根付いた薬局が大事ですね。「わかば調剤の高橋先生に聞いたら安心」とか、「高橋先生に薬を調剤してもらいたい」と思ってもらいたい。

悲しいですが、中々薬局業界ってそういう指標で選んでいる人はとても少ないと思うんです。少なくともうちの薬局は、まだまだですね。ただ、そういう風になっていかないと、今後は厳しいなと思っているので。やっぱり地域の人に選んでもらえる「薬と健康のパートナー」になっていきたいですね。

そうなるための課題は、やはり薬局側が提供したい内容と、患者さまが受けたい内容にズレがあるところでしょうか。
「出来るだけ薬を早くほしい」「説明も聞きたくない」方って多々いらっしゃいます。その辺はもちろん理解しつつ、ただそれに怠けちゃいけないと思っているんです。それに甘えて、はい、と渡すだけを繰り返すと、結局薬局って何の意味があるんだろう、自動販売機でいいや、ってなってしまいますよね。

患者さま側が、「薬局とはこういうもの」とか「ここまで聞いていい」「ここまでしかしてほしくない」って、色々あると思います。それに対して薬局・薬剤師は「私はもっとできますよ」「ここまで聞いていいですか」って挑戦していかないと、 今ある薬局・薬剤師と 患者さま・消費者の溝が埋まらないと思います。
その点、 在宅の患者さまと看護師さんのやり取りなどを見ていても、看護師さんはどんどん突っ込んで聞くんですよね。その積極性は私たちも見習う部分があるのかな、と思っています。

嫌われたり、拒否されたら、という気持ちは皆あると思います。でも、「それでいいや」ではなく、一歩乗り越える勇気をもつこと。一言、「そういえばこの薬でこの間こういう症状の報告があったので、そういうことがあったら連絡してくださいね。」とか添えてあげたり。

そして、一歩踏み込むツールとして、kakariはやはり患者さまと薬局との結びつきを強くしていると思います。
kakariは入れておけば処方せんが勝手に増えるとか、患者さまの効率化とか、そういった待ちのツールでは全然無く、いわば薬局の方から積極的にアプローチして、働きかけて、関係性を築くきっかけになってもらうようなツールです。その結果、患者さまとコミュニケーションできる方法が1つでも増えていくので、薬局にとってありがたいなと思っています。